嘘の花言葉
 だんだんと喉の奥が熱くなり、しまいには蚊の鳴くような声しか出なくなってしまった。

 ――私たちには秘密がある。

 きっと誰も信じられないでしょうね。私たちが遠い昔から、何度も転生を繰り返しているなんて。

 平安時代では貴族と陰陽師の関係だった、私と想士。
 些細なことがきっかけで私たちは恋に落ち、和歌を送りあうようになった。

 そして。一緒に桜を見ようと秘密の約束した日のこと。想士が勤める役所、陰陽寮が火事になり……彼は帰らぬ人となってしまった――

 それ以降、生まれ変わって出会い、別れ、また生まれ変わっては出会い……を何度も繰り返している。今回が何回目の転生なのかわからなくなるほどに。

 時代によって私たちの立場は様々だった。歌人と神職だったこともあれば、団子屋の娘と侍だったことも。そして今回は高校生同士。

 ありとあらゆる関係を経験した私たちだけど、変わらない事もある。

 私と想士が十七歳で出会い、その一年後に想士が不慮の死を遂げる。何度繰り返しても、これだけは変わらない。
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