わけあってイケメン好きをやめました
「あの男、ワガママ言っても絢音は受け入れてくれるって調子に乗ってるところがあったし、絢音はそれに全然気づいてないから、実はモヤモヤしてたんだ」

「……ごめん」

「謝らなくていいよ。でも、絢音は“尽くすタイプ”。そこは自覚したほうがいい。……私はそんなに相手に合わせる必要はないと思うけど」


 利樹の予定に合わせて、私もバイトのシフトを組んでもらったりしていた。
 以前は居酒屋でバイトもしていたけれど、私が夜遅い仕事をするのは彼が嫌がるから辞めたし……円香はそういう部分を言っているのだ。

 だけど私としては彼と一緒にいる時間を作れるようにしたかっただけで、無理はしていなかった。
 利樹を笑顔にしたい、喜ばせたい気持ちから、無意識に“尽くす”行動に出ていたのだろうか。


「絢音は一途だし、かわいい。あの男は、絢音がいかに良い彼女だったか別れてからわかるよ。後悔しても、もう遅いけど」


 ざまぁみろとばかりに、円香がキュッと眉間にしわを寄せた。


「ありがとう。だけど利樹はモテるからね。すぐに新しい彼女ができて、私の存在なんて忘れちゃうよ」


 あの利樹が、後悔などするわけがない。過ぎ去ったことは忘れ、常に前だけを見ているような人だ。
 来るもの拒まず去るもの追わず。水が流れるようなナチュラルな彼の部分から、才能ある素敵な楽曲が生まれるのだと思う。私はそういう彼が好きだった。


「絢音も忘れなよ。男は星の数ほどいるし、アイツと同レベルのイケメンだってめちゃくちゃいるよ!」


 円香の力説に、思わずフフッと笑みが漏れた。
 なんとか私を立ち直らせようとしてくれる彼女に感謝したい。

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