異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「真緒、待たせたね。さぁ行こうか」
後部座席の窓から顔を出した総介さんは何だかいつもよりウキウキしているように見える。
今日は待ちに待った赤ちゃんの心音をしっかりと確認する日だ。前回の胎嚢が確認できた検診から二週間が空いていた。
「真緒、体調はどうだい? 悪阻は? 平気か?」
「今日はだいぶマシです。朝ご飯におにぎり二個も食べちゃいましたよ」
「それはいい事だね。きっとお腹の子も凄く喜んでいるだろう」
「ふふ、だといいんですけどね」
本格的に悪阻が始まって吐いてしまう事が多くなった。多分私は吐き悪阻なんだと思う。食べても吐くを繰り返して体重が二キロ減った。とにかく炊き上がりのお米の匂いがキツい。冷たいご飯やおにぎりは食べられるのに本当人間の体って不思議だ。世の中の妊婦さんはこんなにも苦しい事を乗り越えているんだと思うと改めて凄いなぁと思う。母はこれを一人で乗り越えたんだ……やっぱり母親というのは偉大な存在だ。
「早く心臓の音を聴かせてくれよ」
私の大好きなバリトンボイス、穏やかで優しい表情。そっと手を私のお腹に当てて撫でてくれる。毎回仕事が忙しいはずなのに合間を縫っては東京からわざわざ千葉まで来てくれこうしてお腹を愛でてくれる。
「総介さん遠いのに無理しないで下さいね。お仕事だって忙しいだろうし」
今日だって仕事の合間に来てくれているに違いない。東京と千葉の往復四時間の運転をしてくれている運転手の長谷さんにも申し訳ない。