異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 演奏会が終わりお客様をお見送りするために私も団員達も急いでロビーへ向かうと、私の大好きな彼の姿を一番最初に見つけた。


「総介さんっ」


 小走りで駆け寄ると、私の大好きな優しい笑みで迎え入れてくれた。


「真緒、お疲れ様。とても素晴らしい演奏だったよ。体調は大丈夫かい?」


「はいっ! 大丈夫です! なんだか逆に興奮しちゃって元気いっぱいです!」


「はは、なら良かった。真緒の楽しそうに吹いている姿から俺は目が離せなかったよ。本当に今日はお疲れ様。受付に楽団の皆さんに差し入れを渡しておいたからね。真緒の大好きなバームクーヘンだよ」


 優しく頭を撫でられつい擦り寄りたくなってしまう。


「真緒ちゃーん! ほんとーに素晴らしい演奏だったよ。パパはもう泣いちゃいそうで、泣いちゃいそうでっ」


 大きくて真っ赤な薔薇の花束を持ったお父さんも駆け寄ってきた。ひときは大きい薔薇の花束なのでやたら目立つ。


「これ真緒ちゃんに似合うと思って薔薇の花束。本当に感動したよ、また来年もうちのホールで演奏会してくれると嬉しいなぁ」


 (いつの間にか呼び方が真緒ちゃんになってる、嬉しいなぁ)


「お、お義父さんありがとうございます。また来年も演奏会ができるように頑張りますね」


「お、おおおおおお父さんだってよ、総介っ。嬉しいなぁ、本当に娘の晴れ舞台が盛大に盛り上がってよかったよ。ブラボー、ブラボー」


 喜びのあまり私に飛びつきそうにるお義父さんを総介さんはビリっと引き剥がして呆れた溜息をついた。


「父さん、夫の俺より舞い上がって薔薇の花束まで用意してくるなんて反則ですよ」


 親子でもこんなにも性格って違うんだなぁとつい笑ってしまった。
< 165 / 170 >

この作品をシェア

pagetop