異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 ゆっくりと砂浜を噛み締めながら歩いていた足をピタリと止めた。
 私は総介さんに悲しい思いをさせてしまっていたのだろうか。


「あの、ご、ごめんなっんッ……」


 熱く濡れた彼の舌が私の言葉を遮る。逃げる私の舌さえも捉えては吸い尽くされ、舌の付け根がジンジンと痺れてきた。彼の言葉に、彼の熱にのぼせてしまったのか頭がボーッとする。キスの合間の息継ぎの隙間から二人の唾液が混じり合い溢れそうになるのを彼が掬い上げては私の身体の中に流し込む。流れ込んできた唾液は熱く媚薬のように私の身体を火照らした。


「はぁ、っ……総介さん……」


「ごめん。俺の気持ちばかり押し付けてしまっていたよね。返事はゆっくりでいい、いくらかかっても俺は待つから、少し俺との未来を考えてくれないか?」


 いつもは耳に響くバリトンボイスがビブラートのように少し震えているように聞こえた。


「分かりました。ちゃんとよく考えて返事をさせてください」


「ありがとう。じゃあ早速だけどデートをしよう」


「へ?」


「返事は待つけど真緒に対してアピールはし続けるよ。だからデートをしよう。来週の日曜日は予定は空いているかい?」


「えっと、多分空いてると思います」


「じゃあ、日曜日はデートをしよう。真緒の連絡先を教えてくれるかい?」


 スマートフォンを取り出しお互いの連絡先を交換した。私の数少ない連絡先に九条総介さんが増えた。
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