異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 外に出ると九月下旬だというのにまだまだ秋とは思えない暑さに、ジワリと額が汗ばみ始めた。日差しの強さに目を細めながら一階へ降りる階段へ向かう。
 黒の袖がレースになっているブラウスに白のシフォンスカート、足元にはベージュのパンプスを合わせて少しでも彼の隣に並んでも違和感のないよう、大人っぽく見られるような服装を選んだのだが変じゃないだろうか。ドキドキしながらアパートの階段を降りていくと目の前の道路にはあの黒光りした高級車ではなく、白の乗用車が停まっている。それでも高級車な事には変わりがなく、車に無知な私でも知っているくらい有名なエンブレムが光り輝いているように見えた。あまりにもこの築四十五年のオンボロアパートにそぐわない高級車。
 車の中から私に気づいたのかニコリと微笑み運転席のドアが開いた。スッと出てくる長い足はいつも身に纏っている高級そうなスーツではなく黒のパンツだった。


(今日はデートだって言ってたもんね。スーツなはずないか、でも……凄くかっこいい)

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