異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
 無音の世界の車内。総介さんの声がよく聞こえる。


「今日の演奏も凄くよかったよね。特に俺はトゥーランドットがグッと胸にきたな、思わず泣きそうになってしまったよ。真緒は凄く泣いてたみたいだったけど、曲に入り込んでたのかな?」


 やっぱり泣いていた事がバレていた。私は焦って誤魔化した。


「あはは、すっごく感動しちゃってなんか感極まっちゃいました。今日は本当に最高な一日になりました」


「そっか、なら良かったよ。また一緒に見に行こうな」


 何も言えなかった。聞こえないふりをした。無音の車内で聞こえないなんてあり得ないのに。私は聞こえないふりをした。
 これ以上総介さんを期待させてはいけない。今日散々手まで繋いでおきながらどの口が言ってるんだって思うけれど、これ以上私たちは進めない。なるべく会話を減らそうと私は寝てしまったフリをした。
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