クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす


 通りの反対側から飛んできた看板が和優の目に入った。

『ぶつかる!』

スローモーションのように看板が見えたが、一瞬の事で何が起こったかわからない。

ガツンと大きな音がした。
柊哉が身体ごと和優に覆いかぶさって看板を止めたくれたのだ。

「柊哉さん!」

「大丈夫か!和優!」
「ええ、私より、柊哉さんは?痛かったでしょ。ケガは?」
「これくらい平気だ。鍛えてるしな。」

柊哉が全身で和優を庇ったが、小さな針金が和優の腕を傷つけていた。

「ああっ!和優ちゃん、血が!」

涼真が和優の腕のケガに気付いた。ケガ自体は小さいが深そうだ。

和優にケガは大敵だ。
見ているうちにドクドクと血が流れ出る。

「早く出血を止めないと!」
「そうなのか?」

「和優ちゃんの飲んでる薬は血が止まりにくくなるんだ!」

ハンカチで抑えたくらいでは出血は止まらない。
もう、和優のハンカチは真っ赤だ。


「救急車を呼ぼう!」
幸三が叫んだが、柊哉が車のドアを開いた。

「いや、このままこの車で運んだ方が早い!」

柊哉がサッと見渡して、涼真を指さした。

「君も乗って一番近い救急病院を教えてくれ!」

柊哉は和優と一緒に、一番若くて役に立ちそうな涼真も乗せて車を走らせた。


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