クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす


 電話は、数少ない友人のひとり、宮本友梨亜(みやもとゆりあ)からだった。

「もしもし…。」

『あ、和優(なゆ)?良かった、起きてたのね。』
「ゆりちゃん、どうしたの?こんな時間に。」

『急に、明日の宝塚のチケットが手に入ったの。
 母がお友達と行く予定だったけど、急に都合が悪くなったんですって。』

「宝塚…。」
『和優なら、空いてるんじゃないかと思って!どうかな?』

和優の予定は殆ど空いている事を知っている癖に、友梨亜はわざと強調する。
学生時代からの付き合いならではの遠慮のなさだ。

「いいよ、空いてるから一緒に行こう。」
『良かった!じゃあ、明日うちの車で迎えに行くわ。」



これで、明日の予定が埋まった。

真っ白なスケジュール帳は嫌だ。ほんの些細な事でも、和優は予定を書き込む。
未来に続く何かが、文字にする事で証拠として手帳の中にある気がした。



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