ふんわり王子と甘い恋♡



帰る頃には雨が降っていた。


あの日、女子たちみんなで捜していたフワリくんを、初めて見つけた日。


あの日も確か、雨だった。


フワリくんに会わせてくれた雨の日が。


今はもう、フワリくんから逃げたいだけの雨の日みたい。




「じゃあね、ばいばーい」

「ばいばーい」



電車通学のヨッコと別れて、赤い傘を差して歩く正門前。


シャーーっと、雨の中、自転車で通り過ぎていったのはフワリくん。


声を掛けてくれなかったのは……傘に隠れていたせいで、私のことが見えなかったから。



違う。


きっと……ただ、気づかなかっただけ。


私は別に、フワリくんにとって……どこにいたって気づいてもらえるような存在じゃない。


目に留まるような、特別じゃない。


傘の中で俯いたら、ぽたぽたと、朝と同じ涙が零れた。



好きなのに。


好きになってはもらえない。


好きなのに。


存在に、気づいてももらえない。


昨日はあんなに近くにいたのに。


後ろに乗せてくれたのに。


優しいフワリくんが好きなのに。


優しいフワリくんに辛くなる。



「……、ッ……」



傘で顔を隠して。


声を殺して1人で泣いた。


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