フヘンテキロマネスク

終わりってこんなに呆気ないんだなぁ。


保科くんが教室へと戻っていくのを見送って、そのままズルズルとしゃがみ込む。その拍子にぽろりと、ようやく涙が零れた。視界に映るチェックのスカートとリノリウムの床が、涙の膜で滲んでぼやける。


『最後まで真咲は強いね』


去り際に言われたその言葉が、耳奥にこびり付いて離れない。何度も反芻しては私の胸をえぐっていく。



「……強い、か」



本当は強くなんかなかったよ。

ただ、保科くんの前では強くいたかっただけ。



「ただ強がりなだけなのにね」



そう、ただの強がり。どちらかといえば私は弱い。保科くんには理解のあるふりをして別れをすんなり受け止めたくせに、心の中はぐるぐる汚い感情が渦巻いてる。


どこからともなく聞こえた声に同調するように頷いて、その直後、ん?と首を傾げる。



……今の声って誰?この場には私だけのはずなのに。



伏せていた顔を恐る恐る上げてみるけれど、目の前には誰もいなくて。


あれ、おかしいな。確かに声が間近で聞こえたのに。もしかして幻聴だったのかな。


そう思っていれば、


「違うそっちじゃない。後ろ向いてよ、くる」


今度はもっと近く。耳元で声がして、驚きのままに勢いよく斜め後ろを振り向く。

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