【SR】秘密
仕事に真剣に取り組んでいるか否か。


こういう時の反応ですぐ分かる。


前者は、羨ましそうな悔しそうな目。


後者はスルー。きっと、今日の仕事の終了時間をオープンと共に考えている。


オープンラストのレギュラーのあたしは、もちろん前者だった。


売り上げに変動はあるけれど、ここに入って約一年。


今はナンバー1から5くらいを行ったり来たりしている。


「いらっしゃい、ヤマト」


今日一発目のお客さんは、ニ十三歳の運送業の男。


男は今時の茶髪をかきあげながら嬉しそうに笑う。


この辺りのキャバクラは、そこそこ安くて働く女の子が若いせいか、若年層のお客さんが結構な割合を占めている。


あまり大きな金を落とさない分、客数を増やすので回りが早い。


オープンから一時間もすれば、小さい箱は満員御礼となり、外に吹く木枯らしなんてものともしない熱気に包まれる。


飲酒、敷き詰めた席、若年向きの騒がしいノリ。


地下一階にあるせいで換気もできないので文字通りの熱気。


店内が騒がしくなって来た所で、また名前を呼ばれる。


「ごめんね、待っててね」


グラスの上に、“桜”と書かれた名刺を置いてヤマトのテーブルを離れる。


「団体新規で場内入ったから、上手く掴んで」
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