【SR】秘密
違う事?そんなの……


ちらりと白い容器を見る。


すっきりするからいつも焚いてるベルガモットの精油。


主な作用は、確か気分をすっきりさせたり、むくみなんかには解毒作用があるとか。


あぁ、光毒性があるから肌につけたまま太陽に当たるとシミになりやすいんだっけ。


……解毒作用?


…………まさかね。今は使う人も多いし。


「わからないわ。ううん、もう手遅れでも構わない。
……もう、疲れちゃった。
どうせあたしが死んでも困る人はいないもの」


ふっと力を抜いて座いすに背中を預けて目を固く閉じた。


ずっとあたしを悩ませる声と、足に纏わり付いていたしがらみ。


一人で生き抜くと息巻いて空回りし続けていたんだ……。


溜息をつこうとした瞬間、思い切り抱きしめられて息が詰まった。


「……俺じゃ、駄目か?」


「貴一さん?」


「教師失格でもいい。俺は、お前が……。俺が、ずっと側にいちゃ駄目か?
絶対、一人になんてしない。
……お前が、必要なんだ……美咲」


ずっと心の奥底に押し込めていた感情が一気に噴き出して来る。


そう誰かに呼ばれたのはいつ以来だろう。


「……絶対?」


あたしの震える問いに、抱きしめる腕に力を込めて返事をする貴一さん。


「……あたしが必要?」


苦しい位に込められた力と、まだ冷たい身体に、熱い吐息。


あたしは、自分からも思い切り抱き着いた。


「……一人は、ひとりは、もう嫌……!」


しがみついて子供の様に泣きじゃくる。
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