孤児のマリーと不思議な青年
マリーは孤児だった。

孤児院で拾われ、毎日この街で奉仕活動で人々の助けをしながら暮らしていた。

その国は街の外に決して出てはいけないと言われていたが、幼いマリーにその理由は分からない。
街の入口はいつしか門番が立ち、固く門が閉じられていた。


「なぜまちの外に出てはいけないの?」

マリーがそう聞いても大人たちは、

「恐ろしいものがいるからさ。いけないよ、命が惜しければな。」

「マリーは良い子でしょう?決して出てはいけないわ。」

そう言うだけだった。


ある日、マリーは街の隅でいつものように掃除をしていた。

今日に限って一人きりでいたマリーは、突然やってきた大きな鳥のようなものに掴まえられ、空へと舞い上がった。

マリーはあまりのことに、叫ぶことも出来ずになされるがままになった。


鳥はマリーを連れたまま空を行き、ようやく地に降り立った。

マリーは気が抜けたまま、立ち上がることも出来ず地に転がった。

「あっ……」

マリーは震えながらようやく、自分を攫った鳥の姿を自らの目で見た。

普通の鳥では無かった。

翼はある、鉤爪もある、嘴《くちばし》もある。
しかし今まで見たことがないほどに大きい。
それに、何かが普通の鳥とは違う上、近くにいる、人間ではない何者かと話を始めた。

大鳥の相手は、二足歩行にも関わらず口が裂け、角が生え、尾がある。
どう見ても人間ではない。

大鳥とその何者かの会話は続く。

「…ソレデ、アノ方ハドチラニ?」

「あの方はお一人で探索とのこと。まったく、人間などのどこに、興味など持てようか。あんな野蛮な者共の…。それに立場もお有りだというのに…他の人間に見つかったら如何されるおつもりだろうか?」

大鳥は、舌舐めずりをしながら異形の相手に言う。

「マアマア。俺ハ食糧ヲ捕マエテ来タ。高貴ナアノ方ニハ、少々申シ訳無イガ…ウマソウダロウ?」

何を言っているのかは良く分からなくとも、幼いマリーはとても嫌な予感がした。
しかし空を飛んだ負担と、感じたことのない恐ろしさに体はすくみ、口はきけず、まだ立ち上がることもできない。

「なんだこの食い物は。鬼族に先日生まれた息子に、なんだか似ているじゃないか。俺は見たことがないが、これは人間の子供ではないのか?」
< 1 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop