恋は塩味(ねこ神様のお通り・失恋ファンタジー)
<礼智との出会い・2>

私はあわてて生クリームのボールを置いて、手を拭いて廊下にでた。

校長先生と背の高い外国人が、歩いてくる。
校長先生が私に気が付き、軽く手を上げた。

「こちらはパリ5区のラエーヌ・ベルトラン・・
君はもちろん知っているよね。
桜田さん」

身長は190はあるだろう、少し頭がはげていて
茶色の目の優し気なカリスマパティシエ・・
業界の超有名人だ。

「今度特別授業をお願いするので、下見に来てもらったんだ。」

ベルトラン氏が私を見て、小首をかしげるようにしたので、
隣の通訳であろう男性が

「こちらの方は・・?校長先生?」
私はあわてて頭を下げた。

「本校の実習助手の桜田さん。
今日もコンクールのために来て、試作をしている頑張り屋さんですよ」

通訳の男性が、ベルトラン氏にフランス語で話をしている。

ベルトラン氏が微笑んで、私に手を差し伸べて来た。

「あなたの手は魔法の手ですね。
小麦粉、バター、砂糖、卵のたった4つで素晴らしいお菓子がつくれる。
あなたは魔法使いですよ。
頑張ってください」

通訳の男性が少し早口で言った。

ベルトラン氏は、両手で私の手を包み込むように握ってくれた。
私は感動して涙が出そうになり、深々と頭を下げた。

校長先生がベルトラン氏を促した。

「別館のほうにご案内します。
カフェの実習ができるホールにどうぞ」
そのまま、一行はエレベーターホールに向かった。

私は・・
ベルトラン氏が声をかけてくれたのに、ぼーっとしていた。

私の手は・・魔法の手なのかな。

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