嘘は溺愛のはじまり

伊吹さんのお母様の再来訪以来、すっかり伊吹さんと一緒のベッドで眠るようになってしまった……。

しかも、寝る時はいつも自分の領域で寝始めるのに、目が覚めるとなぜか必ず真ん中より少し向こう――伊吹さん側に私が越境していて……。

更には、目が覚めた時、なぜかいつも後ろから抱き締められるような体勢になっていて……。


「……っ、」


自分の寝相が招いた事態とは言え、毎日のことだと、さすがに……ねえ?

それにしても、どうやって転がって行っているんだろう、私。

どんだけ寝相悪いの……?


そんな状態でも伊吹さんはよく熟睡できているみたいだし、私も、季節が冬と言うこともあってか、伊吹さんと一緒だと暖かくて心地良いのだけど……。

相変わらず、慣れない。

後ろから私をすっぽりと包み込んでいる人の、体温が、優しい息づかいが、一気に私の頭を覚醒させる。

……はぁ。

よく眠っている伊吹さんを起こさないように、小さく息を吐く。


伊吹さんの体温が、あまりにも心地良い。

そして、とても、とても、しあわせだ……。

こんな気持ち、伊吹さんに気付かれちゃいけない。知られちゃ、いけない。

絶対に――。

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