嘘は溺愛のはじまり

だけど、こう言う時に周りの人たちに信じられるのは、いつも、相手の言い分だ――。



――だって、“あの時”も、そうだったから。

私の言い分は、なにひとつ拾ってもらえなくて……。

だから、だから私は――




『その淫乱な女が誘ってきたんだ、俺は何も悪くない! 子供のくせに、このあばずれめ!!』




過去の言葉と、谷川部長の言葉が、重なる――。

あの時と同じ光景が、いままた、私の目の前にある――。


ねぇ、どうして……?

どうして男の人はみんな、そんなことを言うの……?

どうして、私の言い分は、誰も信じてくれないの……?

違う、私は誘ったりなんか、していない。

私は、

私は…………!



「結麻さん……? 結麻さんっ、大丈夫!?」



涙が頬を止めどなく濡らし、視界がぐにゃぐにゃになる。

もともと苦しかった呼吸が更に苦しくなって、ぐにゃぐにゃだった目の前が、今度は真っ暗になった――。




――――悪いのは、いつも、“私”。



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