嘘は溺愛のはじまり

「キスは、嫌じゃない?」

「……はい」


しっかりと答えを待ってから、彼女の唇に、触れるだけのキスをする。

俺の気持ちが暴走しすぎてつい先日何度かそれ以上のキスをしてしまったけれど……怖がらせたくないから、なるべく触れるだけの軽いキスしかしないようにしていた。


けれど、薄く開かれた彼女の唇を見てしまうと、もう、だめだった。


怖がらせないように、とか、優しく、とか考えていられたのは、最初のうちだけだった。

彼女の柔らかい唇、滑らかな絹のような肌、暖かい体温に触れてしまえば、たちまち理性など消え失せる。

恥ずかしそうに両手で顔を隠そうとする腕を、俺は優しく掴んで引きはがした。


「結麻さん、顔、見せて。こっち、見て……」


囁くと、困ったような表情で俺を見上げる彼女は、とても可愛くて、色っぽくて。

ああ。

きっと、いま嫌だと言われても、もう止めることが出来ない。


……泣かせたら、ごめん。

ベッドの中以外では、一生大事にするし泣かせないって誓うから、どうか許して欲しい。

いっぱいいっぱい愛すから、どうか、許して欲しい。




嘘から始まった関係だけど、

 
れからは本当の愛で包み込んで


ずっと、きみを、しあわせにするから――。



~ 伊吹 side fin. ~

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