猫目先輩の甘い眼差し
「新しいクラスはどう? 友達できた?」
「うん。去年同じクラスだった子と仲良くなったよ」
「そうか。良かったな」
壁にかけられた時計をチラッと見る。
家を出るまであと30分以上。
このままボーッとするのもいいけど……。
「…………」
「…………」
お父さんと一緒に時間を潰すのはなぁ。
別に嫌なわけじゃないんだけど、話すネタがないんだよね。
高校生にもなると、親と話す頻度って減るし。だからちょっと気まずい。
スマホか本を持ってくれば良かった。
軽く後悔していると、突然父が立ち上がった。
トイレにでも行くのかなと思いきや、なぜか窓の鍵を開けている。
「えっ、ちょっと何して……」
と、声を上げた瞬間、父の口から盛大なくしゃみが飛び出た。
「……ごめん。太陽と目が合っちゃった」
口元を隠しながら窓ガラスを服で拭く父。
ビックリした……。
ベルの脱走事件が起きてから、ただでさえ神経質になっているというのに。ヒヤヒヤさせないでよ。