猫目先輩の甘い眼差し


「もう……そんなに可愛いこと言わないでよ。我慢してるのにキスしたくなっちゃうじゃん」



そう言って背中に回した腕の力を強めてきた。

あ……そっか。ヘルメット被ってるからできないのか。


脱げばいいんだろうけど、この前みたいに止まらなくなったらいけないから、必死に抑えてるのかな。


しばらく先輩の体温を感じた後、名残惜しいがお別れすることに。



「あっ、何か落ちたよ」

「すみません、ありがとうございます」



体を離した際に落ちたスカーフを拾ってもらった。

いけない。また逃がすところだった。



「ん? 逃がす? 何のこと?」

「あぁ、実は……」



口に出ていたようなので、軽く説明することに。



「トラ吉が脱走する前、ベルも脱走したことがあるんです」

「へぇ……いつ?」

「春休みです。確か3月の終わりだったと……」



思い出していると、車の音とヘッドライトが近づいてきた。

邪魔にならないよう、バイクを駐車場の奥へ動かす。


あれ……? この車は……。



「あらら! こんばんは!」

「お母さん!」
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