日溜まりの憂鬱
 同期の野田さんは円滑な人間関係を構築し、仕事においてもやる気、スタミナ、実力、どれをとっても非の打ち所がない。
 一方の菜穂は学生の頃から最も苦手だった対人面の壁に直面していた。

 野田さんが主となる職場では常に笑い声が絶えない。上司や幹部連中から見ればみんな仲良し、円満関係に見えていただろう。

 しかし菜穂にとっては心から楽しめない、笑えない。休憩時間に小鳥が群れるように肩を並べて芸能人やドラマの話題ではしゃげない。
 仕事終わりにカラオケに行ったり、飲みに行ったり、みんなが楽しんでやっていることを何ひとつ楽しいと思えなかった。

 どうして私はこうなんだろう。

 この口癖は昔からだった。楽しめない自分に嫌悪する。なぜ、みんなが楽しい、面白い、愉快だと感じることに何ひとつ共感できないんだろう。

 ドラマや小説みたいに女同士で和気藹々と過ごし、友情を深めていきたいという憧れはあるのにうまくいかない。常に周囲に対して心を開けず、一線を引き、警戒心を宿してしまうのだ。

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