日溜まりの憂鬱
「うん。大丈夫だよ。お店とか待ち合わせはどこにする?」

『いい感じのイタリアンのお店があるの。そこのランチがお手頃価格なんだ。お店も素敵だから予約しておくね。場所はお店のホームページがあるから後でラインするよ』

「ありがとう。何から何までごめんね」

『ううん。こういうの慣れてるっていうか、いつも幹事を任されるじゃない?』

 任されることが嫌いではない野田さんの声はやはり自信に満ちていた。

 話の流れから断る勇気を持てないのは今に始まったことじゃない。
 確かに約束を取り決めている最中は少しだけ楽しみにもなるし、たまには女友達とランチを楽しむのもいいかもな、と思いもする。

 でもいつもいつも。本当にいつものことだが、日が近付くと憂鬱になる。面倒くさくなり、断る口実がないかと模索する。家で自由気ままにダラダラと過ごすほうがどんなに気楽か。

 胸に渦巻く本音に耳を傾ける。

―――なんで私はこうなんだろう。

 もう一度卓上カレンダーに目を向けた。暗澹とした思いに溜息が溢れる。
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