婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
第一章 鬼灯



花嫁は夫のことをまだよく知らない。

千代田区にあるラグジュアリーホテルのスイートルームからは、皇居外苑と東京タワー、ジオラマのような高層ビル群に、富士山まで眺めることができる。
真下に見える八階の空中庭園には、結婚式の招待客が集まっていた。

奈子(なこ)

低い声に呼ばれて振り向く。

アンティーク調の暖炉に寄りかかって、腕組みをした鬼灯(ほおずき)宗一郎(そういちろう)が奈子を見つめていた。

ネイビーブルーのタキシードで正装した宗一郎は、目眩がするほど洗練されている。
襟の深い紺色がノーブルで、同色の蝶ネクタイはキュートだった。
均整のとれた体躯も、長い脚で歩く身のこなしも、誰にも文句はつけられない。

宗一郎は大股で部屋を横切ると、立ち尽くす奈子の左手を取って薬指にキスをした。

「きれいだな」

奈子は返事に困って頬を赤くする。

もしも今、この完璧な男の隣に並べるくらいきれいに見えるとしたら、それは宗一郎が高級ブランドに作らせたウエディングドレスのせいだ。
クラシカルなオフショルダーのロールカラーとバックリボンは上品で華奢な印象を与え、Aラインのシルエットが清楚で可憐な花嫁にしてくれる。

奈子は背の高い宗一郎をまつげの下からそっと見上げた。
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