堅物な和菓子王子は一途に愛を貫く
間接照明が灯された離れの部屋は、幻想的で全てのことが夢の中の出来事のようだ。でも、目の前にいるタロちゃんは温かい。ちゃんとこれが現実のことなのだと教えてくれた。
聞こえるのは川のせせらぎと二人の息遣いだけ。
「必ず迎えに行くから待っててほしい。少し時間がかかるかもしれないが、俺のことを信じて」
「待ってる…。待ってるから」
体中を滑らかにすべる大きな手。自然と零れ落ちる涙を受け止めてくれる優しい唇。
最初で最後の夜になるかもしれない。
なんとなくそんな予感もする。
でもそうなったとしても絶対に後悔はない。
彩芽は深くそう思った。
「彩芽、愛してる」
優しく揺すられながら聞こえた言葉は、胸の奥にふんわりと居座った。これがこれからの心の支えだ。
「私も…。私も愛してる」
どうか、私の言葉もタロちゃんの心の支えになりますように。
目の前の頬に手を当てて、願いを込めて囁いた。
途端にタロちゃんの動きが激しくなり、考えることを放棄させる。
お互いの記憶に刻み込ませるように、ただひたすら熱を交換する。
瞼の裏には、さっき見た無数の蛍。
やっぱりこれは夢かな…。夢でもいいわ。だってこんなに幸せやもの。
押し寄せてくる快感に身を震わす。
それがはじけた瞬間、すっと意識は闇の中に消えていった。