真夜中に恋の舞う



どうして、私の名前。


聞くよりも先に腕を掴まれて、驚いてその人の顔を見る。明るい茶髪の髪に、ピアス。


着崩した制服は、北高校のものだった。


怖い顔をしている3人に、体育館の裏に連れていかれる。

文化祭だから人はたくさんいるけれど、体育館の裏にまで来る人はいなくて、人通りが少ない。


怖くなって逃げだそうとするけれど、私の手首を掴む男の腕がそれを阻んだ。




「西高の犀川深雪は知ってるな?」

「……」



その言葉に、その関係の人なのだと察しが付く。前に海に行った時に襲ってきた人の仲間なのかもしれない。




「犀川深雪が気に入ってる女がお前だな?」

「犀川も趣味変わってんな。一緒にミスコン出てた女の方が美人なのに」




目の前で繰り広げられる会話に若干イラっとする。そんなことわかってるよ!



「そんな大事な萌乃ちゃんが傷付けられたら、犀川どんな顔するかなー?」




にやにやしながら、男たちが近づいてくる。少しずつ後ずさるけれどこの先は行き止まりで、逃げられそうにない。




「や、やめて、」





男が腕を振り上げて、私はぎゅっと目を瞑る。


けれど、来ると思っていた衝撃はいつまで経っても来なくて、恐る恐る目を開ける、と。






「お前ら、何してるか分かってる?」






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