真夜中に恋の舞う
昨日の自販機の前に行くと、既に赤いパーカーの彼が赤い缶のコーラを飲みながら待っていた。
彼は私を見つけて、驚いたように目を丸くした。
「……本当に来たんだ」
「昨日は傘、ありがとうございました!」
持っていたビニール傘を差し出すと、あはは、と歯を見せて笑う彼。
昨日も思ったけれど、八重歯が見えて猫みたいだ。
「わざわざありがとうね。本当に来てくれるとは思ってなくてびっくりしちゃった」
学ランのボタンには「北」と書いてあって、やっぱり北高校の人なんだと少し怖くなる。
「そうだ、時間ある?せっかくだからお茶でもしようよ」
そう言って彼が指さしたのは、有名なチェーンのコーヒーショップ。
一杯くらいならいいかと思ってしまったのは、彼の屈託ない笑顔のせいだったと思う。
彼は見かけによらず新作のフラペチーノを、私はキャラメルマキアートを注文して、窓際の席に座る。
「そういえば自己紹介してなかったよね。俺は北高校3年の真島章。ショウだけどみんなからはジョーって呼ばれてるから、ジョーって呼んでね。水沢萌乃ちゃん」
「え、」
さらりと名前を呼ばれて、びっくりして目を見張る。
私、名前教えたっけ?
「萌乃ちゃん、有名人だから」
「……それって、犀川くんの関係でですか?」
「あー、うん。そんなところ」
にっこりと笑うジョーくんは、なんだか真意が読めない。
私の名前を、知ってた。
私が犀川くんと仲がいいから、北高校の中で有名ってことなのだろうか。
犀川くんが本当は何をしているのか私は何も知らないから、想像することしかできない。