さよならとつぶやいて、きみは夏空に消えた
初恋は、まぼろしの虹


 ホタルがいない。

 気が付いたのは新幹線の中だった。
『茉莉花』に置いてきてしまったのか? それとも、どこか途中ではぐれたのか。

 思い出せない。

 そもそも、ホタルは『いた』のか?
 古城市を出て最寄り駅の駐車場に車を停め新幹線に乗った時、そこにホタルはいたか? 僕はホタルの分も新幹線のチケットを購入したか?

 頭がぼんやりしていて、今朝のことなのにはっきりしない。

 新幹線の窓の外を瞬く間に都会のビル群が流れ去っていく。抗う術もなく過去へと引きずり込まれる透の意識のようだ。

 ホタルは――蛍は。

 蛍は国際結婚の夫婦から生まれたいわゆるハーフで、そのためか別の理由があるのかわからないが、地元の小学校で仲間はずれにされていた。
 透と同じく長期休暇の間のみ祖父母の家に遊びに来ていて、古城市で会える透だけが蛍の親友だ。
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