桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「では、今、元気よく手を挙げてくれたそこの女の子! ステージに来てくださーい!」

とある女の子が選ばれた。

なんだか緊張した様子でその子はステージへと向かう。

今は歩く後ろ姿しか見えないけど、肩ぐらいのストレートな黒髪で、白いワンピースにベージュ色のカーディガンを羽織った女の子。

そして、ステージ上に立つとその子の顔がはっきりと見えた。

お人形みたいにお顔が小さくて、まるで天使かってぐらいに可愛くて‥‥‥。

俺は、初めてみたその女の子に一目惚れをした。

「お名前は?」

飼育員さんに聞かれて、緊張しながらも答える女の子。

「‥‥‥双葉 蒼です」

双葉 蒼ちゃん‥‥‥。

名前を忘れないように、心の中でそっと呟く。

「じゃあ、蒼ちゃん! そこにいるイルカを優しく触ってみて」

すぐ近くには、1頭のイルカが水槽から頭を出していた。

蒼ちゃんはしゃがみ込んでイルカの頭を優しく撫でる。

その瞳は、とてもキラキラしていて動物が好きなことが伝わってくる。

イルカに癒されてか、だんだんと笑みが溢れる蒼ちゃん。

「ありがとう」

そう言った蒼ちゃんの笑顔は、とても可愛くて一瞬にして目を奪われた。

胸が早いぐらいドクンドクンと高鳴る。
< 140 / 209 >

この作品をシェア

pagetop