桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「‥‥‥ねぇ、陽向くん」

「んっ?」

「寄るところには行けたの?」

泣き過ぎて、すっかり忘れていた。

もし、私のせいで行けてなかったら申し訳ない。

「うん、行けたよ。蒼のもとに」

「えっ?」

今、“私のもとに”って言った?

どういうことなの?

それに、屋上に来てくれた時も『探したんだよ』と言ってたけれど‥‥‥。

「今日1日、元気なくて心配だったんだ」

‥‥‥そっか。

元気ないの分かってたんだ。

だから、昼休みの時、言ってくれたんだね。

『1人で抱え込むのは良くないよ』って。

放課後になっても、ずっと私を気にしてくれてたんだね。

どこまで優しいのかもう分からないよ。

「蒼」

横を向くと、笑顔の陽向くん。

「今まで辛い思いした分、これからは楽しいことをしようよ」

その言葉に、私は静かに首を横に振った。

「‥‥‥できないよ。私は、幸せになっちゃいけないんだ」

私のせいでお父さんを失くしてしまったから。

私だけが楽しく生きていくことなんて、そんなのできそうになくて俯むこうとすると‥‥‥。
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