君が生きていれば、それだけで良かった。
推しとの生活


「うがいの音、推しに聞かれたくないので! ここでお待ちください」

 では! なんて走り去っていく背中を見送る。

 奥に人がいるらしく、ただいまと縁川天晴《えんがわあまはる》が挨拶する声とおかえりと少し年上の女性、おばあさんくらいの声もした。

 彼のお母さんとお婆さんだろう。廊下に突っ立ってるのも気後れするけど、どうせ透ける。障害物にはならない。かといって真ん中に陣取るのも嫌で、そっと隅に寄る。

 廊下の途中、障子戸で隔てられているらしい部屋は居間になっているらしく、テレビがついていた。食卓の上は夕食の準備がしてあり、落ち着いた色味の野菜料理が並んでいる。
< 47 / 73 >

この作品をシェア

pagetop