政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「強欲なわけではない。誰だろうと正当な評価が下されていない状況が続けば不満も持つし根腐れもする。当たり前だ」

強く言い切った蓮見さんに、胸からこみあげてきた感情が喉に詰まるのを感じて顔を逸らした。

「蓮見さんだったら、どうしますか?」

視線の先、透明なビニール袋に入ったスーパーボールを持った男の子が満足そうな笑みを浮かべていた。

今日は少し肌寒い。服が濡れていたし風邪を引かないといいなと思う。

「客観的に見ても正当な評価がされていないのなら、一応納得がいく説明を求めはするが……もし可能ならばこちらからその相手は切り離す。こちらが気持ちを割り切ったり心を割く必要はない」

淡々と言う様子に、まぁ、蓮見さんはそうだろうと納得する。

圧倒的な地位があるし、嫌なら嫌で切り捨てるのかもしれない。分かり合おうと時間を割くのは無駄だと考えるのも、普段の蓮見さんを知っているから理解できる。

もちろん、相手が誰から見てもおかしな評価を下した場合の話だろう。蓮見さんは若干自分本位ではあるけれど、決して暴君ではない。

暴君ではないし……少しわかりづらいところはあるにしても、優しい人だ。

バレないように隣を見上げる。
モデルハウスを眺める横顔が綺麗で魅力的で、ただ見ているだけなのに胸が苦しくなった。

初めて蓮見さんの話を聞いたときには、顔も合わせずに結婚を決めるなんて、ふざけた人だと思った。

同居してからも、平気で初日から家を空けられる冷たい人だと思ったし、家庭にあたたかさを求めないなんて到底理解できなかった。

でも、それは蓮見さんをなにも知らなかったから思ったことだ。


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