政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


どうなっているのか、なにを言われているのか、なかなか頭が追い付かなかった。

つまり蓮見さんは大学時代から私のことは事細かに兄から聞かされていて、〝経済力で結婚相手を選ぶ〟という私の負け惜しみさえも知っていた。

だから、いずれ兄から蓮見さんの情報を聞いた私が、アプローチをかけに姿を現すと踏んで、ずっとではないにしても意識のどこかには置き、待っていた。

なのに私は、校内の同級生だったり先輩だったりに惹かれ、付き合いだしては振られるというルーティンを繰り返し続けて一向に蓮見さんに会いにいく気配を見せず……。

やっと家を訪ねてきたと思ったら、それは父が勝手に決めた政略結婚の予行練習でしかなく、当然蓮見さんの納得いく形ではなかった。

だから……だから、こんなにも懇々とお説教トーンで色々言われているのだろうか。

蓮見さんの話に全体的に漂う雰囲気からは怒っているというよりは、少し拗ねているだとか嫉妬に近いものを感じるので、一方的に話されていても不快感はなかった。

というよりも、そんなにずっと私のことを待っていてくれたのかと思えば嬉しさしか感じないし、あの蓮見さんがじれた感情を抱えていたりしていたのかと想像すると可愛くて頬が緩みそうになってしまう。

今、どんなに淡々と涼しい顔をして話していても、年上の男性に抱く感想でないのはわかっていても、一度生まれた母性本能みたいなものがずっと胸を膨らませていた。


< 191 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop