政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「今なら、宮澤の寄り道に付き合うだけの余裕ができた気がしたんだ。でもまさか結婚しているとは思わなかったし、なにか言う前に全力で振られるとは思わなかったな」
「ごめんなさい。久しぶりに連絡をしてくる同級生は宗教かマルチ商法だろうって勝手に思ってて……」
「いや、いいよ。俺もただ純粋に会いたいと思っただけじゃなかったしね。宮澤も建築家としての未来も、両方手に入るんじゃないかって企んでたから俺に責める権利はないよ。……攻め方を間違えたな。宮澤の旦那への気持ちを崩しにかかるんじゃなくて、本音を告げるのを先にするべきだった。ほだされやすいのは相変わらずみたいだから」

口の端を上げた戸村くんが席を立つ。
なにか言おうと口を開いたけれど、そんな私の言葉を止めるように戸村くんが言う。

「周りを気にして萎縮していたあの頃より、今のほうがよっぽど宮澤らしいと思うよ。悔しいけど、旦那に大事にされてるのが俺にもわかる。……お幸せに」

笑顔を残して戸村くんはカフェを出た。




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