政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


水を飲んでからから、携帯を持ちソファに座る。
そして、もはや恒例となりつつある蓮見さんからのメッセージを待つ。

蓮見さんが出張に行ってから今日で十一日。
初日は特に連絡もなかったのだけれど、二日目に蓮見さんからメッセージが届いた。

《なにか困っていることはないか》

一応、私を気にかけてはくれているらしいメッセージには、特にないと返した。
そしてその翌日。

《しっかり眠れてるか?》
《もし、気持ちが落ち着かないようならパントリーにカモミールが入っている。好きに飲んでいい》

私の睡眠を心配してくれている内容が送られてきた。
たしかに私は実家以外では寝付きが極めて悪くなるタイプなので、前日はグッスリというわけにはいかなかった。

ベッドに入ってから一時間以上は寝付けずにゴロゴロしていた。

カモミールは、実家にいた頃、私がなかなか眠りにつけないときに母が入れてくれたハーブティーだったので、懐かしさもあり、蓮見さんの言葉に甘えさせてもらった。

初日は自分でもどうかと思うほど喧嘩腰だったけれど、こうして私を気にかけてくれている文言を前にしたら、トゲトゲとした気持ちも出てこない。

《今、飲んでます。香りもよくて落ち着きます。ありがとうございます。蓮見さん、普段ハーブティー飲まれるんですね》
《たまに飲むくらいだ。普段、家で飲むのはコーヒーか水、アルコールが多い》
《アルコール、結構飲まれるんですか?》
《味を楽しんでいるだけだから飲んでも一、二杯だな。酔うほどは飲まない》

< 27 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop