愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
祥さんのことが好きなのだと自覚してからというもの、わたしは彼の気持ちが気になるようになってしまった。

彼とわたしは、政略結婚でもなければ好き合って結婚したわけでもない。

彼はとても魅力的な人だから、お相手なんてより取り見取り。お願いせずとも、家柄も容姿も彼に見劣りしないくらい素晴らしい相手がいたはず。

それなのに、いったいどうしてわたしと結婚したの?

処女を貰った責任?
それともご両親を安心させるため?

少なくともわたしのことを『人として』嫌いではないと思う。だって、嫌いな人間を嫁にはしないでしょう?
だとしても、彼がわたしのことを大事にしてくれるのは、『妻』で『妊婦』だから。決して『女』としてじゃない。
その証拠に、これまで一度も『愛している』や『好きだ』と言われたことなんてないのだから。

それなのに、そんな相手から突然『好きです』なんて言われたら……。

喜ぶ?―――ううん、困ってしまうかもしれない。

それどころか、もし迷惑がられたら…?

二度と立ち直れそうにない。

彼に拒絶されることを想像したら、消えたくなるくらい悲しかった。だけどお腹の中には彼の赤ちゃんがいて、この子のためにも彼と別れるなんて出来ない。

たとえ愛し合っているわけじゃなくても、家族として平和に過ごしていけるならそれでいいじゃない。

あんなに嫌な相手との結婚から助けてもらえたのだから、もうこれ以上を望んではいけない気がしていた。
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