愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
最初の時でこそ、わたしを病院に連れて行ってくれたから祥さんも一緒にエコーを見たけれど、それ以降は仕事で付き添うことは不可能。

毎回『健診に付き添いたい』と言ってくれているけれど、その日に限って外せない仕事が入るらしく、毎回残念そうにされていた。

彼の仕事の詳しい中身は全然分からないけれど、小さな料亭を経営している両親ですら休む暇なく働いていたのだ。大ホテルグループのトップならそれとは比べ物にならないくらい忙しいはず。

それでなくても、彼は国内外問わず飛び回っているのだ。身重の嫁にばかりかまけていられない。

だからせめて写真くらいは―――。
そう思っていたのに、肝心の写真を落としてくるなんて。

「本当にごめんなさい……」

ベッドに座った状態で出来るだけ深く腰を折った。失敗続きの自分が情けなくなる。

するとベッドがミシリとたわんだと思ったら、急に温もりに包まれた。

「―――大丈夫だ。順調ならそれでいい」

耳のすぐそばから聞こえた声。すぐ目の前には白いシャツとブルーのネクタイがある。
わたしの頭は祥さんの腕に包まれていた。

「でも……」

「気にするな。それより次回の健診はいつなんだ?」

「……四週間後です」

「そうか。じゃあそこでは一緒に健診に行けるように、秘書にスケジュール調整を頼んでおこう」

「いいんですか…?」

「ああ。お腹の子の成長をおまえと一緒に喜びたいからな」

「祥さん……」

エコー写真を貰った時にわたしが思ったことと、まったく同じことを彼が言った。
それだけでわたしの胸がジンと熱くなり、みるみる目頭が潤んでくる。

目の前の硬い胸にわたしはコツンと自分の額を預けた。
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