愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
管の先には、輸液バッグがぶら下げられた点滴スタンドが。
よく見ると、わたしが寝ているのはいつものベッドではなく、しかも見覚えのない部屋。

「ここ……病院…?」

どうしてわたし、こんなところに。
そう口にしようとした時、記憶が一気によみがえってきた。

『俺が森乃やの金を一千万使い込んだってことをご存じのクセに』
『全部おまえのせいだっ…!』

頭の中で荒尾の言葉が次々に鳴り響く。

『俺とこいつはそういう仲なんです』
『純真なふりをして寄って来た男をたらしこむ―――とんでもない女なんです』

「ち、ちがう……わたしは…そんなこと……、」

『お嬢さんは実の親に売られたんです。俺の子と一緒にね』

「うそっ、この子は……この子は祥さんの、」

そこまで口にした時、自分がしたことが鮮明によみがえってきた。

口が気持ち悪すぎて手の届くところにあったハーブを口に入れて。そしたら急にお腹が―――。

「…赤ちゃんっ!赤ちゃんは!?」

叫ぶように問うと、祥さんの手がピクリと跳ねた。彼は中々顔を上げない。

「祥さんっ…!」

震える声で呼ぶと、彼はスローモーションみたいにゆっくりと、その顔を上げた。

「っ、」

わたしは息を呑んだ。切れ長の瞳が真っ赤に充血していたのだ。

瞬間、わたしは悟った。

ダメだったんだ―――。

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