愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「土産だ」

「えっ…、わたしにですか…?」

「ああ。要らなければ無理はしなくていい」

「要らないなんて、そんな……ありがとうございます」

受け取った紙袋を開けてみる。
中に入っているものを出しながら、わたしは「わぁっ…!」と思わず感嘆の声を上げた。

クッキーがたっぷり入った可愛い缶、中国茶の茶葉、チョコレートの箱。

「あ、…すごい可愛い……」

手に取った色鮮やかなスリッパには、繊細に刺繍された芍薬の花が。思わず顔がほころんだ。

「こんなにいっぱい……」

忙しい出張の合間にこんなにたくさんの物を、わたしのために選んできてくれたなんて。
少なくとも彼は、一緒に居ないときでもわたしのことを気にかけてくれているのだ。そう考えたら、なぜか心がふわっと明るくなった。

「ありがとうございます。―――おかえりなさい、祥さん」

お礼と共に言い忘れたセリフを口にすると、彼はなぜか一瞬動きを止めた。

どうしたんだろう。そう思いながら首をかしげると、柔らかく唇を重ねられた。
< 90 / 225 >

この作品をシェア

pagetop