悪いコの味方!


真っ直ぐになった真篠くん。


その艶やかな瞳の先にたったひとりの女の子。彼の身体の真ん中にある心臓は、その子がいると早く動いて、いのちがあることを実感させる。声を発することもままならないくらい、気持ちの嵩が溢れていって…その子のことしか見えなくなって、焦がれて、欲しくて、耐えきれず震えながら手を伸ばしてーーー


彼の手をその女の子が取ろうとしたところまで想像して、なんだか辛くなってしまってやめた。


フィクションにすぎない。



「べつに、勝手に着いてっちゃったから自業自得だよ。さほど巻き込まれてないし、大丈夫」



だってこんなこと思うのは失礼だろうけど、真篠くんは真っ直ぐ誰かを思ったりしない。


きっとずっとこのまま、のらりくらり、誰の手にも掴めない、捕まらない存在なんだ。



「ん」



短い声とともに、バーコードが起動した携帯画面を向けられる。



「え…」


「連絡先」


「あ、うん」



びっくりした。読み取るとすぐに彼のアイコンが表示される。かわいい猫ちゃんの写真。



「飼ってるの?」


「いや、うちに棲みついてる野良」


「へえ…かわいいね」



もっと猫の話を聞きたいけど、それ以上に気になる。連絡先を交換する関係性なのかな、わたしたち。



「さっきの写真送って」



ああ、なるほど。そんなにみんなとの写真が欲しかったんだね。さすが女の子好き。


急いでフードコートでの写真や美亜子ちゃんたちと撮った写真を送るとちょっと怪訝そうな表情を浮かべた。

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