エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「こうやってお話させていただくの、本当に久しぶりですよね。先日のパーティーでは清司郎さん大人気でしたから私、近寄れなかったんです……」

 医師の個室とは別にある小さな会議室で、清司郎と向かい合わせに座る絢音が、頬を染めて微笑んだ。 

「少しバタバタしておりましたから、せっかく来ていただていたのに、お会いできなくて申し訳ありませんでした」

 形だけの謝罪をして清司郎は絢音をジッと観察した。
 あいかわらずのきつい香水と病院には相応しくない露出の高い洋服。同じ場所で育った従姉妹なのに、千春と合い通ずるものはなにもないように思える。
 その彼女に直接頼むことで、はたして千春にたどり着くことができるだろうか。

「本当に……とっても残念だったんですよ、先生」

 絢音が恨めしそうに清司郎を見た。

「父は八神病院は日本一の病院だっていつも言っていて、次期医院長である先生には私を嫁がせたかったんです。私もそれを望んでおりましたのに……」

 清司郎は無言で腕を組む。
 眉を上げて首を傾げるとそれをどう捉えたのか、絢音は少しムキになって話しはじめた。

「だってどう考えても、私の方が千春よりも清司郎さんの妻に相応しいと思います。あの子ったら、ろくに学校も行っていないんだもの。世間知らずだし、なにより私は健康です」

 つらつらとどうでもいいことを並べて胸を張る絢音に、清司郎はムカムカと吐き気がするような感情を覚える。
 重い病とずっと闘ってきた従姉妹に対してこのような冷たい言葉を使える人間が清司郎と千春のために協力してくれるとは思えなかった。
 やはり千春に会うためにはなにかほかの手立てを考えなくては、清司郎がそう思った時。
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