エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 千春が眉間にシワを寄せて呟くと、康二がはははと声をあげた。

「大丈夫だ。あいつはバカがつくほど頑丈だから! 熱を出したりすることなんぞ、滅多にない。ちょっとやそっとじゃ倒れたりせんよ」

 医者とは思えないような言葉を口にする康二に千春は頬を膨らませた。

「もう! お義父さんったら!」

「ははは、大丈夫、大丈夫」

 でもそこで康二は、なにかを思い出したように「いやまてよ」と呟いた。

「……そういえば、最近あったな。あいつがぶっ倒れたことが」

 そしてまたしばらく思案して、ひとりで納得したようにうんうんと頷いている。

「お義父さん?」 

 首を傾げて問いかけると、康二は優しい目で千春を見て口開いた。

「千春ちゃんの手術の日だよ」

「……え?」

 康二が八神病院の建物を見上げた。

「あの日、千春ちゃんの容体が安定したのを確認して清司郎は深夜に帰宅したんだ。そしてそのまま熱を出して、その夜は一晩苦しんどった」

 千春自身、目が覚めていなかった時の出来事だとはいえ、まったく知らなかった話に千春は目を見開いた。

「手術の日、清君も病気だったんですか」

 康二が優しく微笑んで首を振った。

「いや違う。病気というわけじゃない。おそらくは手術に対する極度の緊張とプレッシャーにやられたんだろう。いわゆる知恵熱、というやつだな」

「緊張とプレッシャー?」
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