エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 庭掃除をする業者を入れてはいるが、小夜は猫の糞に困っている……辻褄が合うような合わないような話を千春は頭の中で反芻する。
 そこへ清司郎が問いかけた。

「千春、返事は?」

「……わかった」

 戸惑いながらも答えると、清司郎が満足そうな笑みを浮かべた。

「必ずなにか羽織っていけ。それから胸が苦しかったり、頭がくらくらするならやめるように。見張り役として、小夜さんが付き添うから」

「見張り役……?」

 千春が呟くと、清司郎が頷いた。

「そうだ。ホテルでお前を追いかけていたあの人が、今までお前を見張っていたんだろう? これからは小夜さんが彼女の代わりだ」

 確かに結城家では澤田が常に千春を見張っていて、なにをするにもついてきた。
 昨日までは、家に帰りたいと千春は散々言ってきたのだから、見張りをつけられても文句は言えない。
 でもあの怖い澤田と、優しげな小夜はまったく似ても似つかないような……。

「千春、返事は?」

 ふたりの女性をぼんやりと思い浮かべていた千春に、清司郎がまた問いかける。

「え? あ、うん。わかった」

 ハッとして、千春がそう答えると、清司郎は頷いて部屋を出て行った。
 しばらくすると、また小夜が部屋にやってきた。

「さあさ、朝ごはんにしましょう。しっかり食べないとお散歩できませんよ」

「……」

 ニコニコして言う小夜を千春は黙って目で追った。

「千春さんはデザートはなにがいいかしら。苺? それともオレンジ?」

「……苺でお願いします」

「ふふふ、了解。待っててね」

 そう言い残して小夜はまた部屋を出ていく。
 千春はベッドに腰を下ろして、小さく首を傾げた。
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