エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 名前を呼ぶ清司郎の声、荒い吐息、自分を縛り付ける腕もなにもかもが愛おしい。
 ずっとずっとこのままこうしていたいくらいだった。
 ずっとこのまま、彼の腕の中で……。

「千春、大丈夫か?」

 清司郎からの問いかけに、千春は薄く瞼を開く。額と額をくっつけたまま、ふたりは息を整える。
 そしてまた、唇を寄せ合った。
 ——その時。
 コンコンというノックの音。
 見つめ合ったまま静止した。

「清司郎さん? 少しいいですか? 千春さんがいらっしゃらなくて」

 小夜だった。
 部屋にいない千春を心配して探しにきたのだろう。
 ここ最近は千春も体調がいいから、以前ほどはその行動を周りに心配されることはない。
 でももう十時を回った今、さすがに部屋にいないの不自然だった。

「千春ならここにいます」

 清司郎が答えてゆっくりと出口に歩み寄り、薄くドアを開けた。

「読み聞かせの練習をしてたんです」

「あらそうなの。安心した」

「もう終わりましたから俺がちゃんと寝かせます。小夜さんはあがってください」

 そう言う清司郎の背中を、千春は潤んだ瞳でぼんやりと見つめていた。
 残念なような、これでよかったような、不思議な気持ちだった。
 あのままキスを続けていたら、どうなってしまっていたか。まったくわからなくて少し怖い。
 勇気を出して一歩踏み出した結果は、千春の想像を超えすぎていて、まだ受け止めきれていなかった。

「千春、送っていくからもう部屋へ帰れ」

 一旦ドアを閉めた清司郎が、振り返る。
 いつも通りのその姿に、千春の胸は切なくなった。
 やはり自分と彼の間には大きな大きな開きがある。
 あんなキスをしておいて、もう平然としていられる彼が信じられなかった。
 千春の方はまだ胸がドキドキとして、身体中が熱いままだというのに……。
 複雑な気持ちを持て余したまま、千春はこくんと頷いた。
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