再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
退院のお迎えは新太。
忙しい中わざわざお休みをとってきてくれた。

「新太、ありがとう」

今回の事件は一部新聞でも取り上げられるほどの事件となった。
大方の報道はエリート医師の犯罪者への転落を伝える物だったけれど、中には病院の研修医に対する待遇の悪さが原因ではないかとするものや痴情のもつれによる犯行ではないかとするものもあり噂が噂を呼ぶ展開となってしまった。

「本当に副院長の家でいいのか?」
車を発進させてから確認するように聞く新太。

「うん、あそこが今の私の家だから」
「そうか」

退院にあたってしばらくこの土地を離れることを考えたけれど、私は逃げ出したくなくて元の生活に戻ることに決めた。

「なあ環」

ん?
前を見て運転する新太を、私は振り向いた。

「これからも、ずっと一緒にいような」
「えっ」
突然すぎて言葉が出ない。

好きな人にずっと一緒にいたいと言ってもらえば嫌な気持ちはしない。
うれしいし、幸せだとも思う。でも・・・
< 171 / 200 >

この作品をシェア

pagetop