外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「──あれ? 晶さん……?」


 気づくとひとり花畑の小道の中にいて、となりにいたはずの晶さんの姿がない。

 撮影に夢中になりすぎて、ひとりで立ち止まりすぎたり、勝手にずんずん進んでしまっていたのかもしれない。

 きょろきょろと辺りを見回すと、少し離れたところで私のことを見ている晶さんの姿があった。

 私が捜している姿を目に、フッと笑ったのがわかる。


「ごめんなさい。私、夢中になりすぎててひとりで」


 駆け寄ってきた私を見下ろし、晶さんは穏やかに微笑む。頭の上に手を乗せ、ぽんぽんと優しく撫でた。


「気にしなくていい。そのために今日は来たんだ。むしろ、そんなに夢中になっている姿を見られて、来た甲斐があると思っていたくらいだ」

 そう言った晶さんが私の手を取る。

「でも、撮影中は両手が塞がるからそこだけが難点だな」

「え?」

「手が繋げない」


 サラリと出てきた言葉に鼓動が跳ねる。


 それは、どういうつもりで言っているの?
 カップルに、夫婦に見えるようにって、そういうこと?

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