外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
ふたりだけの優しい時間



 夏の暑さもやっとやわらいできた、九月下旬。


「美鈴、支度できたか」

「はい。もう行けます」

「急がなくていい。ゆっくりで」


 妊娠八カ月。いよいよ妊娠後期に突入した。

 動揺の隠せない妊娠発覚から、早半年。

 ひとりで産み育てる覚悟から始まった妊婦生活も、気持ちが通じ合ったことで幸せ一色となった。

 私の妊娠を知った晶さんは、予感通りかなり過保護な旦那様になってしまった。

 家事は無理してやらないこと。重いものは持たないように、買い物はネットスーパーを使って届けてもらうこと。

 そういった私とお腹の赤ちゃんを思っての気遣いから始まり、よりよいマタニティライフについて自ら調べることもしていた。

 妊娠を知った翌日には、妊娠初期は葉酸を採ったほうがいいと早速サプリメントを買ってきたし、更にその後日はルイボスティーがいいらしいとお茶も取り寄せてくれていた。

 妊婦本人の私より熱心で、頭が上がらない徹底ぶりだ。

< 234 / 254 >

この作品をシェア

pagetop