【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。


「あ、焼き上がったわね」

「はい」

「取り出して確認してみましょう」

 そんなこんなでレシピ通りに作ったアップルパイが、焼きあがったようだ。
 開発部専用の大きなオーブンから、アップルパイを乗せたトレーをそっと取り出してみると……。

「うわっ……美味しそう」

「本当ね。美味しそう」

「いい香りしますね」

 見事な見た目のアップルパイが姿を現した。

「天野川さん、見た目はどう?」

「見た目は同じに近いです。いつも食べてたアップルパイも、見た目はこんな感じでした」

 こんがりとした焼色に、ふわっと香るバターの香り、そしてリンゴの爽やかな香り。
 これがわたしの大好きな母の味だと思うと、なんか感慨深い。

「見た目は上々ね。 さ、とりあえず切り分けてみましょう」

「はい」

 焼き上がったばかりのアップルパイを、ケーキナイフを使って片山さんが一切れずつ切り分けていく。

「すごく美味しそう……」

 お母さんのアップルパイを思い出して、なんだか懐かしい気持ちになった。

「天野川さんのお母さんのアップルパイって、中身は少しトロッとしてるのね」
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