【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。

大翔さんのお母さんのこと



「由紀乃、今日の試作はどうだった?」

 夕食を食べながら、大翔さんはわたしに聞いてきた。

「一応、母のレシピ通りに作ってみました。そこからみんなで、試食をしました」

 今日の流れを一通り説明すると、大翔さんは「そうか」と答えた。

「一応、母のレシピ通りに作ってみたんです。出来上がりは、母の味に近かったんですけど……。何かが違うような気もしました」

 レシピ通りに作っても、同じ味にならないものなんだなって今日感じた。 母のアップルパイと同じ味かと言われると、ちょっと違ったのだ。

「そうか。……確かに母の味って、自分で再現しようと思って作っても、なかなか再現出来ないものだよな」

 と、大翔さんはすき焼きを食べながら言った。

「……やっぱり、そうなんですかね」

 わたしたち、母の味を再現出来るのかな……?

「母の味って言っても、そこには母の愛情っていうのもあるんだろうしな。 そこには母親の努力や愛情が、たくさん詰まってるってことだな」

「母親の努力と、愛情……」

 大翔さんにそう言われると、そうなのかも思った。

「俺は少なくとも、そう思う」
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