呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 アリアは眉尻を下げると自身の胸の上で手を重ねた。
「私、あなたが心配でたまらなかったの。どうしているかなってずっと気になって。だけどお屋敷に何度伺っても追い返されるし……もっと早くに会いたかったわ」
 アリアはエオノラに縋るように抱きついてきた。彼女から、ふわりと男性向けの香水の匂いがする。その匂いはリックが普段使っている香りと同じだった。
「ア、リア……」
 たちまちエオノラの身体が硬直する。

 アリアはリックと会っていたのだろうか。こんな風に抱き合っていたのだろうか。時間はまだ朝なのにアリアからリックの香りがするのはどうしてだろう。
 考えたって答えは出ないし、野暮なことを聞く勇気もない。
 今の自分がどんな顔をしているのか想像できない。幸い、抱きつくアリアからは自分の表情が見えないことに安心感を覚えた。
 エオノラは声を絞り出した。
「……私なら大丈夫だから。アリアこそ……アリアこそ、あの後状況を把握するのが大変だったでしょう?」
 何故なら、エオノラがリックの婚約者だと知らなかったのだから。
 するとアリアは小さく頷いた。

< 105 / 200 >

この作品をシェア

pagetop