呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


「お兄様、今夜は私の晴れ舞台よ。飲み過ぎて千鳥足なんかにならないでね」
「会場の熱気で喉が渇いたんだ。もちろん、エオノラとのダンスがあるからこれで最後にしておくよ……」
「フォーサイス殿」
 すると、不意に後ろから声を掛けられた。ゼレクと同時に振り向くとそこには彼の同僚がいる。エオノラも何回か顔を合わせたことがある人だった。

「お楽しみのところ申し訳ない。例の法案で確認したいことがあるんだ。至急一緒に政務室まで来てくれないだろうか?」
 同僚の発言にゼレクは戸惑いの表情を浮かべた。
「突然そんなこと言われても困る」
「だけど、あれは君が担当している。君じゃないと分からない部分も多いんだ」
「それは知っている。だけどこれから妹の大事な……」
 エオノラはそっと兄の腕を叩くと、大丈夫だというように頷いた。

「お兄様、私のことは気にせずに行ってきてください」
「しかし、そうなったらエオノラは……」
 すると今度はシュリアがゼレクを安心させる言葉を掛ける。
「ゼレク様、私がエオノラを守りますから大丈夫です。一曲目のダンスが始まるまでに戻ってきてください」
「……分かったシュリア。絶対約束するから、エオノラのことを頼むよ」
 シュリアが頷くと、ゼレクは同僚と共に会場を去って行った。

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